「G街愛」あるいは「Gスポット」37年史
 第2回「深海魚」
上った2階は7人がけカウンター。

上機嫌(カマ)ママは、でっかいロックグラスのキラ〜ンと光るぶっかき氷にトクトクトクトクトクトクと、ウイスキーを山盛に注ぎ、「いいのよ〜、心配しないでぇ〜」と僕に勧める。

「心配スルワイ」と思えど「喉はゴックン」。      (哀しいものですねぇ〜、のんべの体って)

「マッ、イイカ」と、とりあえずコキュッ・コキュッ・コキュ〜ッと呑み干せば、
「♀ まぁ〜強いのねぇ〜♪」とじゃんじゃかお代わりしてくれる深海魚ママ。

その内客席は満杯。
と、ある恰幅のよいサラリーマン客が、ママになにやら懇願し始める。
するとママは鎖で客の腕を鎖でしばり、蝋燭に火をつけ「ロウ」をたらしはじめる。

うっとりする恍惚の客。
それをまた他の客も「いいナァ〜」とほほえましく見つめている。

そんな和気あいあいの、仲良し同好会ムードに、オイラもすっかりリラックス。
そんなオラ(当時:紅顔高校生=今:厚顔おじん)をうれしげに見つめるママやお客たち。

その内ある客が、「もうたまんね」って感じで、ママの手に何やら(推定3千円)握らせる。
「ちょと失礼」とママと客は、奥の部屋(今思えば三階?)に消えちまう。

やがて....「ジャラッ」「ベシッ」「ウッ」と物音がおごそかに聞こえ始めたのである。
「ジャラッ」「ベシッ」「ウッ」と、べんせい鞭声しゅくしゅく粛々(有名な川中島の詩吟)リフレインは、
やがてひときは大きな、「ウッ」で果てた(らしい)のでありました。
当時「底なし・のんべ」だった僕は、その後、少し寂びしげなママを背に、すたこら店を出た次第でした。
勘定は格安だった。だからその後もずっと通った。

いや〜しかし、今思えばついてた。
つまり「キヤッチ」オカマ(おまけ豆知識→)「サド・マゾ」という三拍子そろった名店だったからだ。当時の混迷を極めた、何が何やらようわからん、混沌ゴールデン街めぐりの「基本三原則」を、たった一軒の、この店から仕入れることが出来たからである。

その後、キヤッチの店にも、オカマの店にも、秘密会員制みたいな一見さんお断りチックな店にも、高そうな店も安そうな店も、そして、おっなげな、だけど本当はメチャやさしいママたちの店に行けたのも、ひとえに、この店で「免疫注射」を打ってもらったのが効いたから、だったような気がするからである。

 
 バックナンバー
 第1回「初めの一歩」
 第2回「深海魚」
 第3回「プーさん」
 ?有名人だらけの店?
 第4回「ぷーさんの有名人たち」
 第5回(最終回)「G街空間の秘密」